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連載

日本の科学アラカルト 117

国内研究者も奮闘する 「新型コロナ対策」の取り組み

2020年5月号


 新型コロナウイルスとの「戦い」は人類が直面したひとつの危機だ。しかし歴史を振り返れば、人類はたびたび新しい感染症の恐怖に晒されてきた。大量の死者を出しながらもここまで人類の営みが継続してきた原因のひとつには、医学に代表される科学分野における研究成果が、感染症を克服する助けになったことは確実だ。
 国内に目を移すと賛否はありながらも、「官」「民」が協力して外出自粛などの対策を模索し、感染拡大に歯止めをかけようという取り組みが続いている。ここに「学」、すなわち大学などの研究機関はどのような役割を果たせるのか。国内での感染者が確認されて三カ月足らずの中、すでに多くの研究者がこの課題に取り組んでいる。
 目下、社会的に課題になっているのは、新型コロナに感染しているか否かを調べる検査件数だ。件数を急拡大するリスクなどが指摘されているものの、採用されているPCR検査が使い勝手のよくない手法であることも明らかになっている。そこで、国内の研究機関では、簡便な検査法や、抗原抗体検査の手法などに関する模索が始まり、すでに成果を発表しているところもある。
 長崎大・・・