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政治

天皇の「お言葉」はなぜ出ない

未曾有の災厄で迷える「令和流」

2020年6月号

 上皇陛下が約二百年ぶりの生前退位を決意した理由の一つは、「二度と自粛社会を再来させたくない」という深慮であった。平成の始まりは、昭和天皇の喪に服す過剰な自粛ムードが日本中を覆った。退位の決意を示した「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」(二〇一六年八月八日)では、「社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶ」事態を避けたいと述べられた。
 祝福に包まれて令和が始まり、天皇陛下即位の一連の儀式も台風19号被害に伴う祝宴縮小を除けば一通り終えて、無事の皇位継承という宿願が果たされようとしていた矢先、コロナ自粛が社会も皇室も呑み込んだ。儀式の締めくくりに予定されていた立皇嗣の礼や、即位後初の天皇・皇后外遊となるはずだった英国訪問も延期され、順調に見えた令和皇室の船出は、進水する最後の段階で、前途に難路が待ち構えている宿命を突きつけられたのである。
 平成に続く自粛とはいえ、一年で明けた服喪と違い、今回は抜け出せる時が来るのか分からない。皇室もまた、庶民と同じ「行動変容」を迫られるからだ。

ビデオメッセージに慎重な宮内庁・・・