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連載

皇室の風 142

ダーウィンとシャルダン
岩井 克己

2020年6月号

第二次大戦後、初めて昭和天皇の「日常生活」の写真が世界に報じられたのは米誌『ライフ』一九四六年二月四日号の「裕仁の日曜日」だった。書斎でくつろぎ新聞を開く背広姿の天皇の傍らに、リンカーンと並びダーウィンの胸像がさりげなく置かれていたのが話題を呼んだという。「現人神」とまつりあげた軍部の一部から「軟弱」と陰口を言われた、生物学者としての「人間天皇」をアピールした。
 博物学者南方熊楠、植物学者牧野富太郎らと交流があり、葉山で海洋生物採集、那須や皇居で植物観察にうちこんだ。吹上広芝に繁った草を「雑草」と呼んだ侍従を「雑草ということはない。みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」とたしなめたエピソードは有名だ。
 明仁前天皇(現上皇)もハゼ類の分類学研究をライフワークとし、日本魚類学会、ロンドン・リンネ協会外国会員。数十本の論文のなかには「ハゼ科魚類の進化」についての小論もある。英国王立協会からチャールズ二世メダルを授与され、ロンドン・リンネ協会でリンネ生誕三百年記念行事の基調講演(英語)も行った。
 皇嗣秋篠宮も家禽類の研究で理学博士号を持・・・