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連載

《世界のキーパーソン》モンセフ・スラウイ(「ワープ・スピード作戦」首席顧問)

米国のワクチン開発の全権を握る

2020年6月号

 ワープ・スピードは米SFドラマの古典「スタートレック」から飛び出した言葉。実際にはありえない「光速の二千倍の速度」で、新型コロナウイルスのワクチンを生み出せ、というのがドナルド・トランプ大統領の命令である。
 ワクチン開発は、平均でざっと十年かかる。それを「年末までに」を目標にせよ、というのだ。
 スラウイは今のホワイトハウスでは珍しい、アラブ系である。
 一九五九年、モロッコの港町アガディールに生まれた。十代の時、事業家だった父親が死亡して、五人のきょうだいは母親に残された。医師になろうと単身ヨーロッパに渡ったのは十七の時。ベルギーのブリュッセル自由大学に入学を果たし、二十代の前半で分子生物学と免疫学の博士号を取得した。
 後に「グラクソ・スミスクライン(GSK)」となる製薬会社に入って、ワクチン開発にまい進した。子宮頸癌、エボラ出血熱、マラリアなど様々なワクチン開発で実績を上げた。GSKが二〇一六年に米メリーランド州に、調査研究センターを開設した時には、「スラウイ・センター」と名付けられたほど、功績を残した。
 スラウイはまた、巨・・・