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連載

皇室の風 143

大数の法則
岩井 克己

2020年7月号

 立皇嗣の礼がコロナ禍で延び、それに連れて「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」(天皇退位特例法の附帯決議)の論議も休戦状態が続く。
 身位は法的にすでに確定し、宮内庁の新体制も定着しており「急ぐことはない」ということだろう。首相官邸中枢には「四十年は手を付けなくていい」との声もあると仄聞する。コロナ禍と政権の危機で「それどころではない」というのが本音だろう。
 十五年後でも天皇七十五歳、秋篠宮六十九歳、悠仁親王二十八歳。二十年後でも天皇八十歳、秋篠宮七十四歳、悠仁親王三十三歳。いずれも健在だろうし、悠仁親王も何人の男子を得るか見えてくる年齢である。
 平成十六(二〇〇四)年、雅子妃(現皇后)の「適応障害」が発表されてから十六年。翌年、小泉純一郎内閣で「皇室典範に関する有識者会議」が女性・女系天皇を打ち出して国論分裂を招き、挫折してから十五年が経った。
 往時を知る宮内庁幹部、記者もほとんど居なくなったので、改めて書くが、男系が貫かれてきた皇統観念を直系長子主義へと根底から転換する大仕事にもかかわらず、同有識者会議の論議は開・・・