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社会・文化

コロナ「新薬・ワクチン」は遥か遠く

今冬も「丸腰」で迎える日本

2020年7月号

 新型コロナウイルスのワクチンと治療薬の開発が待たれる中、新型コロナ版「ドラッグ・ワクチンラグ」とも言える現実が目の前に迫っている。マスコミは、世界の開発状況を詳細に報じ、さも順調に進んでいるような印象を与えているが、実態は違う。開発は苦戦続きで、もし成功したとしても日本人が恩恵にあずかれない可能性が高いのだ。
 まずはワクチンから見てみよう。開発競争の先頭を走るのは米モデルナ社だ。彼らは、新型コロナのメッセンジャーRNA(mRNA)を脂質ナノ粒子に包み込み投与する。米国立アレルギー・感染症研究所と協力し、三月十六日には最初の症例に投与した。
 既に第一相、第二相の臨床試験を終え、六月十一日には三万人を対象とした第三相臨床試験を七月中に開始すると発表している。mRNA技術を応用することで、面倒で時間のかかるウイルス培養を省略できる。
 ただ、彼らのワクチンには懐疑の声もある。五月十八日、第一相試験で実際にウイルスの増殖を抑制する中和抗体を確認したと発表しているが、実際に確認されたのは四十五人の被験者のうち八人のみだ。また、第一相試験で単に抗体を作る以上のT・・・