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経済

《地方金融の研究》山口銀行

若社長抜擢で「院政」の悪夢再来

2020年8月号

 面白きこともなき世を面白く―。二十七歳の若さで散った「維新の風雲児」高杉晋作にあやかったわけでもあるまいが、山口県下関市に本拠を置く山口フィナンシャルグループ(YMFG)が次々と新規事業への参入計画を打ち出し、地銀界の耳目を集めている。
 二〇一五年に地方創生を担うコンサルティングファーム「YMFG ZONEプラニング」を設立したのを皮切りに、一七年十月には地域商社「やまぐち」を発足。一九年十月には有料職業紹介の事業免許を取得し、人材サービス会社「YMキャリア」を立ち上げた。
 そして今年に入って事業化に踏み切ったのがアグリビジネスと観光だ。投資ファンドなどと組んで四月に新会社「バンカーズファーム」を設立したのに続き、六月には地域の観光振興を手掛けるグループ会社「ワイエムツーリズム」も起動させた。

「ドン」と同じ手法

 山口県の名産品の一つがワサビだ。しかし後継者難などで〇五年に九十トンあった生産量は一八年にはわずか六トンと十分の一以下に。これを蘇らせようというのがバンカーズファーム設立・・・