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経済

米国不動産市場はまた崩壊するか

世界コロナ危機の新たな「震源」

2020年9月号

「都市部住宅価格が下落するリスクがあると思う」。ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー教授(イェール大学)は七月、テレビ番組でこう述べた。二〇〇七年から〇八年にかけての米国の住宅バブル崩壊を正確に予測したことで知られる同氏は、住宅、株、債券など主要市場のほぼすべてが現在「割高」になっており、パンデミックによって経済見通しの不確実性が高まったと指摘している。もっとも、近い将来の「崩壊」までは予測していない。
 最近の報道を見ても「サンフランシスコで物件在庫が前年比で倍増」「九十日以上の深刻な住宅ローン延滞がさらに増加」「ニューヨークで新規賃貸契約件数が半減」といった大不況を思わせる見出しが並ぶ一方で、「住宅着工が需要に追い付かない」「建材不足で木材先物価格が急騰」「住宅ローン申請件数急増」「中古住宅販売件数、〇六年以来十五年ぶり高水準」といったバブルを思わせる見出しも並んでいる。矛盾するようなこれらの事実は、いずれも今起こっていることである。どういうわけか。

ニューヨーク市は壊滅的な状況

 まず全米・・・