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革新技術都市「深圳」にも落日

「改革開放」を根絶する習近平

2020年11月号

 一九八〇年代以降の中国経済の驚異的な発展を牽引したのは鄧小平氏の「改革開放」政策だが、その実践の場となった深圳が果たした役割は極めて大きかった。深圳の力の源は外資と民間企業が社会主義の制約を超え、活動する自由度にあった。それゆえファーウェイ、テンセントなど米国を怯えさせるイノベーション企業が生まれた。今、激化する米中冷戦のなか習近平政権は米国の技術封鎖に立ち向かうため、深圳の完全支配を目論んでいる。だが、自由のない深圳はイノベーション力を失い、企業や人材は離散する。習政権は「角を矯めて牛を殺す」愚に陥りかけている。
「世界経済は大変革の時代に入り、中国こそが世界の主導権を握る時である」。十月十四日、深圳の経済特区成立四十周年祝賀大会で、習国家主席は珍しく淡々とした口調でこう演説した。いつもの口角泡を飛ばす扇動的な口調ではない点が居並ぶ深圳市政府幹部や主要な深圳企業のトップにかえって凄みを感じさせた。習主席は深圳の人にしか分からない表現で深圳を脅したのである。
 深圳のICT産業の中心ともいえる南山区ハイテクパーク。巨大な高層ツインビルのテンセント本社と道を挟んだ南・・・