三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

《企業研究》近鉄グループHD

「赤字膨張」で崩壊の瀬戸際

2020年12月号

 大手私鉄関係者らの間に衝撃と動揺が走った。今年十一月十二日に行われた近鉄グループホールディングス(GHD)の二〇二〇年度上期(四~九月)決算発表。その記者会見の席上、安本幸泰副社長が唐突に鉄道運賃の引き上げに言及したためだ。
 正確には「運賃・料金の改定に向けた制度研究や検討を進めている」とやや遠回しの表現だったとはいえ、同月上旬から中旬にかけて相次ぎ開かれた大手私鉄各社による一連の決算会見で経営首脳が「値上げ」に触れたのは、近鉄GHD一社のみ。半ば“禁句”とも化してきたフレーズなだけに関東系私鉄幹部の一人も次のように語って驚きを隠さない。
「新型コロナ禍で多くの国民が生活苦に喘いでいる。そんな最中に消費増税分を転嫁する形の運賃引き上げならまだしも、単独値上げなど軽々に言い出せるハズもない。それに(公共料金でもある)鉄道運賃の改定はひとえに国交省(国土交通省)マター。申請しても国交大臣の認可が下りなければ所詮は無理スジだ。にもかかわらず値上げを口走ってしまうのだから、よほど八方塞がりに陥っているのか、台所が火の車なのか」
 だが、・・・