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経済

《企業研究》アサヒビール

首位陥落「大企業病」が重症化

2021年3月号

 まさに「べた褒め」だった。
 五年ぶりのトップ交代を発表したビール業界大手のアサヒグループホールディングス(HD)。小路明善社長兼CEO(最高経営責任者)が代表権のない会長兼取締役会議長に就任。後任には専務兼CFO(最高財務責任者)の勝木敦志氏が昇格する。泉谷直木会長は特別顧問に退く。三月二十五日の定時株主総会と取締役会で正式決定する方針だ。
 二月十二日に自身が社外取締役を務める帝国ホテルで開かれた交代会見。小路社長は報道陣から勝木氏を次期トップに起用した理由を問われて「グローバルな知見と人脈を備えた、国際派の第一人者であること。人物・力量・実績の三つのスキルマトリックスが申し分なかった」ことを指摘。サステナビリティと経営を統一・加速させるなど「(二〇一九年に制定した)グループのフィロソフィーを実現していく上で最適で、最も相応しい人物だ」と手放しで絶賛してみせた。
 まさか自分で選んだ後継者の能力を公の場で悪しざまに罵る経営者などいるハズもなかろう。とはいえ「完全無欠」の人材というのもまた、存在しない。にもかかわらず美辞麗句ばかりを並べられては周囲は鼻・・・