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連載

《世界のキーパーソン》サラ・アミリ(アラブ首長国連邦先端技術担当相)

UAE火星ミッションの「表の顔」

2021年3月号

 大国がしのぎを削る宇宙開発競争に、中東のアラブ首長国連邦(UAE)が名乗り出た。昨年七月、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた火星探査機「アマル(希望)」が今年二月十日、火星の周回軌道に乗った。
 同じ日、中国の「天問1号」も火星周回軌道に到達した。さらに十九日には、米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーシビアランス(忍耐)」が、火星に着陸した。四億八千万キロメートルの遠くの天体に突如、地球から探索ラッシュが襲来したのである。
 宇宙開発は技術と経済力を備えた大国のエリート・クラブである。金満産油国とはいえ、人口九百万人余りの国がいかに、火星ミッションにこぎつけたのか。
 一言で要約すれば、資源・人材の集中と国際協力である。
 UAEが宇宙開発に本腰を入れたのは、十数年前のこと。二〇〇六年、「先端科学技術研究所」が創設された。韓国企業と契約を結んで、三年後には地球観測衛星「ドバイサット1」の打ち上げにこぎつけた。この時はカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、ドニエプルロケットにより打ち上げられた。
 衛星打ち上げの成功・・・