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連載

現代史の言霊  第37話

五月の薔薇 -仏大統領選でミッテラン当選(一九八一年)-
伊熊 幹雄

2021年5月号

《政権を獲得しなければなりません》
フランソワ・ミッテラン(元仏大統領)

 フランスの五月は、全国各地に花が咲き乱れ、心浮き立つ季節だ。不思議とこの月に、大きな事件が起きる。左派政党を大同団結させた、フランソワ・ミッテランが一九八一年に大統領に当選したのも、まさにそんな画期的政変だった。

得体の知れない「スフィンクス」

 今年一月八日は快晴だった。
 アキテーヌ地方の小さな村ジャルナックに、エマニュエル・マクロン大統領やフランソワ・オランド前大統領ら、フランスの著名な政治家たちが集まった。ミッテランの死後、二十五年の命日だ。
 ミッテランは生前、「得体の知れない人物」として「スフィンクス」の異名をとった。彫りの深い顔の目の奥で、何を考えているのか。側近でも本心が分からなかった。政治的遍歴は追いきれないほど、複雑だ。その上、死の直後から、新たな謎が加わった。
 一九九六年のジャルナックでの葬儀には、ダニエル夫人と二人・・・