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「アリババ叩き」と習近平の焦燥

ハイテク企業「失速」の重い代償

2021年5月号


 Eコマースから物流、金融、農業、交通、教育まで着々と手を広げ、経済だけでなく社会全体を広くカバーし、中国国民にとって不可欠な存在になったアリババ。デジタル・プラットフォーマーの域を越え、一党独裁の中国共産党にとって「警戒すべき存在」になったことは日本ではあまり意識されていない。中国政府が独占禁止法によるアリババへの巨額罰金、金融プラットフォーム、アント・グループの解体を進めるのは「内なる敵」の芽を摘むためだ。だが、習近平総書記がより恐れるべきは国民を「中国の夢」から覚醒させ、共産党への疑問を喚起させるアリババ創業者、馬雲氏の存在だ。
「中国当局は馬氏が保有するアント株を関係の深い第三者に転売することを認めず、事実上接収する可能性がある」。四月十七日深夜(中国時間)にロイターが複数の関係者の話として伝えたニュースは中国の新興企業家や知識人に衝撃を与えた。中国国内ではロイターのニュースサイトはブロックされており読むことができないが、配信から十分後には中国のSNSにロイター電は転送され、一気に拡散した。

政府が奪う「二十一世紀の档案」・・・