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経済

《企業研究》東 芝

車谷「追放」の真相と核心

2021年5月号

「大山鳴動して車谷一匹」。東芝幹部はこう自嘲する。それもそのはず。四月に大騒動になった英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズによる東芝買収と株式非公開化の提案はほぼ収束。起こった変化と言えば、社長兼CEO(最高経営責任者)だった車谷暢昭の辞任のみという顛末になりかねないからだ。
 とはいえ「車谷を追放できたことは喜ばしい限り」と多くの東芝関係者が歓迎の声をあげる。「とにかく上から目線」「エリート金融マンの性か、メーカーである東芝を見下している」と、東芝社内でこれでもかと悪評が聞こえてくる車谷がいなくなったことで、社内の結束は逆に強まったようだ。
 そもそも今回の大騒動は、振り返ってみれば車谷による自作自演の三文芝居だったことが明らかになりつつある。発端は三月十八日の臨時株主総会だった。

「CVC三羽烏」の策謀と永山の予感

 筆頭株主であるシンガポールの物言う株主、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントはこの総会で、株主提案を出していた。車谷が取締役として再任された昨年の定時株主総会・・・