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WORLD

中国の大学が「世界進出」に猛進

「思想輸出」と技術盗取の拠点として

2021年6月号

 中国が、国内名門大学の世界進出を進めている。
 特に北京大学、清華大学、復旦大学など四十二校を「世界一流を目指す大学」と位置付けて、ヨーロッパやアジア各国に新キャンパス建設を求めている。進出先では、自然科学研究だけでなく、社会科学の分野でも「中国の特色ある社会主義」を教えていく方針で、大学教育への中国の進出に警戒の声が強まっている。

ブダペストに二千億円キャンパス

 中国の大学で、欧州連合(EU)に最初に進出するのは、上海の復旦大学である。今年四月、ハンガリー政府との間で「戦略協定」に調印し、二〇二四年までに首都ブダペストに「復旦ハンガリー大学」を開校することが決まった。
 総事業費は十八億ドル(約二千億円)と見積もられ、市民を驚かせた。ハンガリーのGDP(国内総生産)の一%超にあたる、目もくらむような数字だからだ。こんな教育機関は自国に存在しない。
 このうちハンガリー政府の負担は二割。残りの約十五億ドルは、中国政府の融資である。建設は公共入札となるが、「中国建築股份有限公司・・・