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経済

豊田父子の異様な「トヨタ私物化」

問われる「世襲」の正統性

2021年6月号

「ここまであからさまだと、あきれるというよりも笑えてくる」と、関係者の口をあんぐりさせる「事件」が起こった。五月に終了した中日新聞と系列の東京新聞の長期連載「トヨタウォーズ」の記事だ。この連載はトヨタ担当の全国紙経済記者が「あからさまなトヨタのちょうちん記事。記事体広告とはうたってはいないが、トヨタの言い分をそのまま垂れ流しているだけ」と切り捨てる程度の内容。しかし、この事実上の「記事体広告」で、驚くべき内容が伝えられていたというのだ。
 連載では豊田章男社長が新車開発で絶大な発言力を持つ「マスタードライバー」のポジションを、自らが師と仰ぐマスタードライバーだった故・成瀬弘氏から受け継いだストーリーを伝えている。が、これに首をかしげる関係者も少なくない。「章男社長はレース経験もあり一般ドライバーに比べれば運転はうまいが、新車開発の成否を左右するマスタードライバーとしては力不足」と、新車開発に詳しい業界紙記者は指摘する。

カー・レースで「公私混同」

 成瀬氏は一九六三年に自動車整備専門学校を卒業後、ト・・・