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経済

企業が「監査法人」で難儀する時代

容易でない「依頼先探し」と報酬高騰

2021年6月号

『監査法人の需給逼迫 ~不祥事多発、海外子会社増で監査業務膨張が背景』
 上場企業や資本金五億円以上などの大手企業が外部監査を依頼する監査法人大手の需給が逼迫し、依頼先を求めて漂流する企業が出始めた。二〇一五年に東芝の不正会計事件が発覚、担当した新日本監査法人が行政処分を受けるなど監査をめぐる不祥事が相次いだことで、この数年、監査が厳格化され、作業量が増加しているからだ。一方で、上場大手は監査法人とのなれ合い批判をかわすため、定期的に変更する動きもあり、監査現場では混乱も生じている。大手監査法人でも受託が限界に達し、監査費用の大幅値上げで顧客を〝リストラ”する動きすらある。
 東証一部上場の中堅機械メーカー。経理担当役員は昨年秋、長年担当してもらっている大手四社(ビッグ4)の一角の監査法人から「来期の監査報酬値上げについて」という通知を受け取った。数年に一回はもらう「料金引き上げ要請」とあまり気にも留めなかったが、中身を読んで驚愕した。
 それまで六千五百万円だった基本報酬を、いきなり八千五百万円に値上げしたいという通告だったからだ。従来の値上・・・