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政治

官邸主導「東芝事件」の黒幕

「元公安トップ」に隷属した経産省

2021年7月号

 外為法改正を推進した“事件”の黒幕は、密かにこう義憤を募らせているに違いない。
〈いったい何が悪いんだ。わが国の機微技術を、体を張ってハゲタカから守っているのではないか〉
 東芝の昨年七月の株主総会に経済産業省が不当に介入したとされる疑惑―。それは、同省の実像を大きく歪めたと言っていい。
 調査に当たった弁護士の報告書は、経産省が東芝CEOの車谷暢昭ら当時の経営陣を守るため、外為法を濫用し、海外のアクティビストに圧力をかけた経緯を明らかにした。企業統治の原則を無視して産業ナショナリズムに走る同省の姿は既視感があり、一九八〇年代、世界に畏怖された「ノートリアスMITI(悪名高き通産省)」の復活を指摘する報道もあった。が、見当違いも甚だしい。
 報告書に登場するのは、当時の商務情報政策局長・西山圭太、同局情報産業課長・菊川人吾、そして大臣官房政策立案総括審議官・荒井勝喜の三人。彼らに外資排除を目論む確信犯の風狂さは皆無だ。黒幕は他にいる。その証拠に、経産相の梶山弘志は「省として調査はしない」と歯切れ悪く幕引きを急ぐ。同省幹部・・・