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社会・文化

五輪選手村は「集団感染」の修羅場に

世界が危ぶむ「杜撰な対策」

2021年7月号

 コロナパンデミックの最中に開催される東京五輪は、日本の威信を懸けたイベントとなる。だが、「安心安全」についての専門家の予想は悲観的だ。感染対策の実態が国際標準とかけ離れているのだ。「このままでは選手村での集団感染は避けられない」と五輪関係者は顔を曇らせる。
 東京五輪における日本の感染対策の基本は「バブル方式」だ。選手と関係者を「バブル」で包み込むように外部環境と遮断し、感染者との接触を断つ。日本入国後の行動は競技会場、練習会場、選手村・ホテルに制限される。移動は専用車両。違反したら制裁金や出場停止などの処分が科される。
 この対策への専門家の評価は厳しい。日本オリンピック委員会(JOC)理事を務める山口香筑波大学教授は、「『安全ではなく危険です』から入ったほうがいいと思う」と苦言を呈した。英『ランセット』は、六月十二日号の社説で「回避可能な感染を拡大し、帰国後に新たな流行を引き起こすリスクがある」と警鐘を鳴らしている。
 まずは、五輪が開催される時期の感染状況を冷静に予想することだ。現在の第四波には楽観ムードが漂うが、五輪の時期に「第五波」が襲来する可・・・