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「台湾侵攻」で中朝同盟の不穏

有事での北朝鮮の「役回り」

2021年8月号

 中国と北朝鮮は七月十一日、中朝友好協力相互援助条約の締結六十周年を迎えた。習近平中国国家主席と金正恩朝鮮労働党総書記が交換した祝電には、不気味な内容が多々、含まれていた。
 両首脳はまず、社会主義を強調した。米欧などが、主要七カ国(G7)首脳会議などで中国への対抗軸として「価値と理念」を重視していることを意識した表現だ。次に両首脳は共に「血で結ばれた友好」という表現を使った。朝鮮戦争を共に戦った両国は従来、お互いの関係を「血盟」と呼んできた。胡錦濤政権の末期ごろからこの表現が減っていたが、久しぶりに復活した。そして第三に、習主席は「金正恩総書記と共に戦略的意思疎通を強化する」と強調した。
 同条約第二条には、いずれかの国が攻撃を受けて戦争状態に陥ったとき、他方が直ちに軍事その他の支援を行うとする「自動参戦条項」が含まれている。元々は、朝鮮半島有事の際、中国が参戦を約束した取り決めだと解釈されてきた。だが今回、金正恩氏ではなく、習主席が「戦略的意思疎通」という言葉を使ったところに、一部の専門家は注目している。専門家の一人は「中国が東アジアで軍事行動を起こす際、北朝鮮・・・