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経済

米国経済を襲う「インフレ」

住宅価格「急騰」にみる凶兆

2021年9月号

「過去最高」「史上最速」―。
 米住宅市場の熱狂を示す言葉が目立っている。ケース・シラー住宅価格指数(二十都市)は四月に年率一五・〇%、五月に一七・〇%上昇した。
 同指数は前回不動産バブルのピークである二〇〇六年七月の数値を二七・二%も上回っている(この統計を含めて住宅価格関連の指標は二カ月遅れで発表されるため、本稿執筆時点で最新の数値は五月となる)。上昇をけん引したのは南西部アリゾナ州フェニックス(年率二五・九%)、西部カリフォルニア州サンディエゴ(同二四・七%)、西部ワシントン州シアトル(同二三・九%)など。クリーブランド、ダラスなど五都市で過去最高の年間上昇率を記録。二十都市すべてで上昇率が加速した。
 他の住宅統計も同様で米連邦住宅金融局(FHFA)の住宅価格指数も五月、前年同月比で一八%上昇。全米不動産協会(NAR)が発表した六月の中古住宅販売価格の中央値は前年同月比二三・四%上昇し、過去最高の三十六万三千三百ドルに。NARは「上昇ペースは過去三十年間で最速」という。
 不動産テックのレッドフィンのデータでは「全米で住宅が販売されて購・・・