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ロシア「天然ガス事業」の蹉跌

「経済苦」プーチンの焦燥

2021年10月号

 ロシアの天然ガス事業に暗雲が漂っている。
 海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」は、ようやく完成までこぎつけたものの、各種の審査業務が残っていて、年内に使用開始するのは不可能な情勢だ。
 一方、欧州では今春からガス価格が急上昇している。その背景として、「パイプライン使用を急がせるため、ロシアが天然ガスの価格操作を行っている」との疑いが持ち上がった。九月には、欧州議会の議員有志たち約四十人が、欧州委員会に「ロシアの不正」を調査するように求めた。
 欧州のガス価格急騰は、市民の生活に広範な影響を与えている。天然ガス資源を「国際政治の武器」として使うロシアに対し、欧州の目は厳しくなる一方だ。

ロシアのガス価格操作疑惑

 欧州の天然ガス市場に異変が見られたのは、今春のこと。ロシアのガス供給が急に減ったのをきっかけに、じわじわと上昇した。
 ロシア側は、供給が減った理由を「季節ごとのパイプラインのメンテナンスのため」と説明したが、夏になっても供給は増えてこない。欧州経済が新・・・

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