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経済

《クローズ・アップ》小島 啓二(日立製作所社長)

米社巨額買収の成果を出せるか

2021年10月号

 小島啓二・日立製作所社長(六十四歳)が就任して三カ月余り。就任直後に経団連会長を務めていた中西宏明・前会長の死去、菅義偉首相の退陣表明などの変動もあったが、コロナ感染からの世界経済の回復の波に乗り、順調な滑り出しを見せている。
 二〇〇八年のリーマンショックで巨額赤字を計上、翌年、経営破綻もささやかれるなかで、子会社にいた川村隆氏が異例の形で社長に就任。“川村マジック”で危機を切り抜け、続く中西社長、東原敏昭社長が回復軌道に乗せた。業態が似ていたライバル、東芝が原発事業の大損失をきっかけに暗転、主力事業を次々売却し、解体のプロセスに入るのと対照的に日立は盛り返し、ソニーと並び日本の電子・電機業界の復活を牽引する。
 だが、日立の事業内容はこの十年間で様変わりした。ディスプレー、半導体などは事業ポートフォリオから消え、送配電、上下水道、鉄道、医療など社会インフラが牽引し、さらに今後、大きく伸びようとしているのが製造業向けのデジタル・ソリューション・ビジネスだ。
 その象徴といえる商品ブランドが「Lumada(ルマーダ)」。日立が自ら・・・