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経済

岸田政権「四半期決算廃止」の妄動

企業統治のさらなる劣化要因に

2021年11月号

 岸田文雄首相は十月八日の所信表明演説で、上場企業に課している四半期決算の開示義務を見直す方針を表明した。四半期決算が「経営の短期志向を招き、企業の長期的な成長を妨げる」との理屈だ。経団連加盟の大企業の一部が四半期決算への不満を募らせており、岸田首相はお得意の「聞く力」を発揮した。日本で四半期決算が法的に義務づけられて十年余。本当に企業を近視眼的な経営に追い込んでいるのか、検証もないまま廃止すれば、経営陣のみのお手盛りの意思決定に戻りかねない。長期的視野の経営と四半期決算開示は二律背反ではないことを岸田首相は知るべきだ。
「『新しい資本主義』とは企業をスポイルし、退行、退廃させる意味だったのか」。三十歳代の新興IT企業の取締役は岸田構想にあきれ顔だ。
 四半期決算の開示は二〇〇三年に東京証券取引所などの自主ルールとして始まり、〇九年三月期から金融商品取引法で上場企業に義務づけられた。企業の経営状況をタイムリーに公表することで投資家が的確な判断を下す材料を提供する目的。米国では大恐慌が続くなかで制定された「一九三四年証券取引所法」で上場企業に開示が義務づけられた。現行・・・