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経済

《クローズ・アップ》上田 隆之(INPEX社長)

資源高「絶好調」の先の難路

2021年11月号

 日本最大の石油・天然ガスの開発会社であるINPEXの業績が原油と液化天然ガス(LNG)の価格高騰で、絶好調となっている。二〇一八年の就任以来、供給過剰、コロナ感染などによる燃料価格低迷の逆風の中を歩んできた上田隆之社長(六十五歳)は一転、強い追い風を受けることになった。
 INPEXにとって幸運だったのは、一八年十月に出荷を開始した豪州のイクシスLNGプロジェクトが年産八百九十万トンのフル生産に入った段階で、LNG長期契約価格のベースとなる原油価格が急騰したことだ。世界中でLNGが不足し、既契約の買い手が引き取りを渋る二年前の状況とは様変わりした。
 結果的に同社の二一年十二月期の連結フリーキャッシュフロー(純現金収支)は過去最大の三千二百億円に膨れ上がる見通し。ガソリン、軽油など燃料油の需要減少が一段と加速し、事業の多角化など構造改革を進める石油元売りにとっては「うらやましいを通り越して、憎たらしい存在」(大手元売り役員)。
 イクシスは総事業費が四兆円にのぼり、七二%の権益を握るINPEXは二兆円を超える負債を抱えたが、想定外の利益膨張で、債務は一気・・・