三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

ヒューリックは日本版「恒大」か

不動産市況悪化で「経営暗転」の不安

2021年11月号

 合同会社・芝口橋インベストメント―今年九月末、東京・港区の電通グループ本社ビルを中核とした「汐留A街区不動産」を買い取った特別目的会社(SPC)の名称だ。SPCの筆頭株主は「不動産業界の風雲児」(市場関係者)とも呼ばれるヒューリック。利益水準では今や三井不動産、三菱地所、住友不動産の大手三社に次ぐ地位にまで上り詰めた。
 ヒューリックの母体は旧富士銀行(現みずほ銀行)の店舗不動産などを保有・管理していた日本橋興業。SPCへの出資比率は明らかになっていないが、四〇~五〇%未満。同じ芙蓉グループ系企業も二〇~三〇%を拠出しているとみられている。
 電通はオフィススペースを一部縮小したうえで、SPCと期間十一年の定期建物賃貸借契約を締結、引き続き本社として使用する。余剰となったスペースは今後、後継テナントが募られる見込み。取引総額はリースバックに関連する会計処理コストなどを含めて約三千億円に上った模様だ。
 だが、不動産業界筋の一人は今回の取引にヒューリック失速の“予兆”を感じ取るという。

自慢の高収益体質に“陰り”・・・