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WORLD

欧州連合はすでに「死に体」

「コロナと移民」で崩れた国家統合

2021年12月号

 米国に匹敵する外交パワーを目指した欧州連合(EU)に、深刻な疑念が内外から起こっている。国境管理や新型コロナウイルス感染対策など、人々の命と健康にかかわる問題で、EUが失敗を重ねていることが原因だ。
 このままでは、米中に次ぐ第三の極になるどころか、「EUの実験は失敗に終わった」という指摘が強まりそうだ。

「人道主義」の偽善的素顔

 世界の目が、ポーランドとベラルーシの国境の移民たちに向けられていた今秋のことだ。
 欧州大陸の南の「国境」では、別の人道危機が続いていた。EU加盟国クロアチアと、加盟申請をしているボスニア・ヘルツェゴビナの国境で、クロアチア国境警備隊の暴力沙汰が起きていた。アフガニスタンなど南アジアから来た移民を、追い散らすのだ。
 国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の欧州担当者は、「クロアチアの警備隊は明らかに『拷問』と言える、残虐な暴力を移民たちに加えている。特製こん棒で、入境してくる者たちを滅多打ちにして、傷口にケチャップなどを振りかける。警備・・・