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米中対立の新領域「宇宙情報通信」

米企業先行で中国が猛追開始

2021年12月号

 宇宙開発で米国を追いかける中国が、宇宙インターネット(衛星ブロードバンド)事業に本腰を入れ始めた。地上のブロードバンド敷設が間に合わない僻地でも、衛星網を使って高度の情報通信ができるため、習近平国家主席率いる中国指導部は、看板政策である「一帯一路」に組み込んで、発展途上国に中国規格の宇宙ネットを売り込む戦略だ。
 宇宙ネット事業では、米国のスペースX社による「スターリンク」事業が先行しているが、中国も急ピッチで宇宙開発の力をつけており、中国政府は近いうちにスペースXに追いつこうと躍起になっている。そうなれば、宇宙ネット事業の規格でもリードできるとあって、国家的事業として取り組んでいる。
 宇宙にある人工衛星を、通信やネット事業に使うことは、一九九〇年代に始まった。
 読者も「衛星中継」という言葉は馴染みであろう。砂漠の真っただ中や、アマゾン川流域のような深い熱帯雨林から、衛星を頼りに映像や情報を送る技術だ。この頃の衛星は高度三万五千キロメートルものかなたにあり、送信できるデータは少なく、時間もかかった。
 スペースXの「スターリンク」は、地球か・・・

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