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習近平「三期目」で縮む中国

危うい「社会主義回帰」の道へ

2021年12月号

 中国共産党は結党百年の総括となる第三の「歴史決議」を習近平総書記の“実質独裁”の宣言として内外に示した。指導者の引退内規を覆し、個人崇拝を強制してまで権力にとどまる習氏が目指すのは、米国を抜く「世界最強国」の地位と「共同富裕」が示す社会主義だ。だが、市場経済からの離脱は不動産、民間デジタル企業など成長エンジンを次々と不調にし、中国経済は揚力を失いつつある。統治優先で、経済軽視の習体制が、一九五〇年代末以降の「大躍進」政策の失敗と巻き返しの「文化大革命」という毛沢東氏の中国の悲劇をなぞるリスクは高い。  
 第十九期中央委員会第六回全体会議(六中全会)は習総書記を建国の父である毛沢東氏、「改革開放」政策を推進した鄧小平氏と並ぶ指導者として位置付ける「歴史決議」を採択した。鄧氏が毛氏のような独裁者の再来を防ぐために党に刷り込んだ「個人崇拝の禁止」は消えた。習氏は対抗勢力を制圧し、来年秋の党大会で三期目に入ることが確実となった。  
 一方、前々任の江沢民氏の「三つの代表」、前任の胡錦濤氏の「科学的発展観」という理念も歴史決議に盛り込まれた。改革・・・