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連載

マスコミ 業界 ばなし

2021年12月号

 いささか旧聞だが、先の衆院選挙で朝日新聞が行った「中盤情勢調査」が、業界の秘かな話題となっている。各紙の中で最も「アタリ」に近かった、その調査方法が、今までにない手法だったからだ。  
 比例区は従来通りの電話調査。一方の選挙区ではネットを使った予測を試みた。これはネット四社の契約者をサンプルの母体にするもので、「調査会社に登録したモニター会員を対象にする調査方法」(朝日新聞)だという。旧来のランダムに選ばれた調査対象ではないため、他社は朝日が「大外し」するのを期待した。  
 ところが朝日は用意周到だった。数年前の選挙から「裏調査」としてネット方式のテストを繰り返してきた。世論調査部では、なんと数学が専門の社員を起用し、精度を上げるための数式を駆使したという。  初の実戦となった今回、朝日社内では結果を危ぶむ声もあったとされる。だが、蓋を開けてみれば、事情通をして「党派に寄らず、的確に得票率を予測できていた」と言わしめる成果となった。ネット調査の効果は、精度だけにとどまらない。費用面で「一億円程度圧縮した」との説も出るほど、コストが下がったようだ。 「さらに精度・・・

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