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ウクライナは戦争にはならない

米露交渉で終始優位のプーチン

2022年1月号

 ロシアがウクライナ国境近くに十万人規模の大部隊を配備したのは、大仕掛けの「はったり」だったことが、米露の外交交渉で明らかになった。狙いは、ロシアが望む結果を得るため、米政府にウクライナを説得させることだ。
 外交筋によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は年末までに、ウクライナ問題で米側の約束を取り付け、さらに多くを要求している。「ウクライナ危機」を演出することで、すっかりロシアは生き返ったようだ。
 米露協議が一段落したのは、十二月半ばのモスクワだ。日中も零度以下の寒さの中、米国からカレン・ドンフリード国務次官補がやって来た。相手は、ドミトリー・コザック大統領府副長官とセルゲイ・リャブコフ外務次官である。
 詰めに臨んだ高官たちは、今の米露関係を象徴する顔ぶれだった。
 ドンフリード次官補は、ドイツ系家庭の生まれで、高学歴の外交専門家。大学、シンクタンク、米政府を行き来する「米外交エスタブリッシュメント」の一人だ。ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やアントニー・ブリンケン国務長官らと同様に、頭脳明晰で弁が立ち、身なり・・・