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経済

米金融緩和「急停止」が生む波乱

株式市場「混沌」の行方

2022年2月号

 米国経済は、高速道路を時速二百キロで走ってきたクルマに等しい。過熱したエンジンルームからインフレという煙が出ている。運転手であるFRB(米連邦準備制度理事会)ジェローム・パウエル議長は今、テーパリング(量的緩和の縮小)によってアクセルペダルを緩めはじめたところだが、緩め方は荒っぽい。時間がないからだ。
 エンジンブレーキを使う余裕もなく、アクセルペダルを外すと同時にブレーキペダル(政策金利引き上げ)に足を乗せる必要がある。立て続けにもう一つのブレーキ(QT:量的引き締め)も使う。二〇一〇年代と異なり曲がりくねる二〇年代の高速道路。高度なブレーキ操作を要する。FRBは今年、前回の金融正常化で四年かけたことを一年でやろうとする。「流動性ショック」は避けられない。

普通ではない今回の引き締め

「より高いインフレが定着するリスクが増大しました」
 十二月のFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見でパウエル議長は、持続的インフレのリスクを認めた。
 一月十二日に発表された十二月の消費者・・・