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経済

半導体王者「TSMC」に暗雲

日米独「拡大路線」に潜む罠

2022年2月号

 世界最大のファウンドリー(半導体受託製造企業)である台湾積体電路製造(TSMC)が快走を続けている。世界的な半導体の需給逼迫を背景に、回路微細化など技術優位性で、スマホやAI(人工知能)向けの注文がTSMCに集中しているからだ。半導体安全保障を求める米国、日本、ドイツ各国政府の誘致を受け、工場のグローバル展開も一気に進める。TSMCの絶頂期は今後も続くようにみえるが、足元では工場新設ラッシュで競争力の源泉である生産ライン技術者が不足する懸念が高まる。米中冷戦のなか、政治に踊らされ、実力以上に戦線を延ばしたTSMCには衰退の兆しが忍び寄っている。
 五年前、世界でTSMCの名前を知るのは電子業界関係者と証券アナリストくらいだっただろう。半導体メーカーといっても、受託専業の黒衣に過ぎず、同社が製造した半導体が組み込まれた機器のユーザーにはTSMCのブランドは無縁だった。だが、今、TSMCの名前が新聞やテレビなどメディアに載らない日はほぼないほど世界に知られるようになった。
 TSMCの昨年の売上高は前年比一八・五%増の一兆五千九百億台湾ドル(約六兆六千億円)で、純益は・・・