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Book Reviewing Globe 453

人間とAIの「主従関係」

2022年2月号

 AI(人工知能)が人智を超える時代がいずれ訪れる―データを加工する能力においては人間はAIに逆立ちしてもかなわないが、それだけではない。AIは人が察知できない現実を察知する。デカルトは「我思う、故に我あり」と喝破したが、AIが“考える”ことになれば、人間とは一体何か?  という哲学的問題に我々は直面することになる。
 AIは、人間と人間性を破壊するのではないかという恐怖感を我々に与えている。イーロン・マスクはすでに二〇一四年に次のようにツイートしている。「AIは核よりずっと危険」。
 核についても、我々は同じような恐怖感を抱いてきた。広島と長崎への原爆投下以後、それは兵器としては使われなかったが、新たな核保有国が登場すればするほど抑止力は拡散し、不確実になる。そこへいま、サイバーとAIのすさまじい技術革新がかぶさってきた。サイバー空間がすべての戦略領域にまたがり、選択肢を広げるほどに脆弱性は深まる。
 サイバー空間の特徴は、スピードと曖昧さである。いったん攻撃されたら防御しても手遅れである。誰が攻撃しているのか直ちにはわ・・・