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政治

国家安全保障局の「機能不全」

発足8年で「無用の長物」に

2022年3月号

 日本の外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障会議(NSC)の中核をなす国家安全保障局(NSS)が大揺れに揺れている。
「いったい、どうなってるんだ」
「聞く力」を武器に、温厚な人柄を最大のセールスポイントとしている首相、岸田文雄が珍しく声を荒らげた。
 二月八日夕、週刊誌がNSSナンバー3の内閣審議官、藤井敏彦に関するスキャンダルを掲載するとの情報を聞いた岸田は、上司であるNSS局長、秋葉剛男を執務室に呼んで叱責、同席した内閣情報官、瀧澤裕昭に週刊誌のネタ元を洗うよう指示したのだ。
 藤井は、今国会最大の目玉法案である経済安保推進法案策定の中心人物であり、経済安保法制準備室長も兼務していた。
 そんな彼が、無届けでビジネススクールで講演して多額の報酬を受け取り、あろうことか朝日新聞の女性記者の自宅に宿泊していた。官邸は八日付で藤井を更迭したが、国会での法案審議にも暗雲が漂ってきた。
 岸田が即決で厳しい処分を下したのは、国会対策もさることながら、NSSの管理体制に強い危機感を抱いたからだ。
 経済安保推進法の・・・