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経済

米国インフレの「最悪シナリオ」

近づく「景気後退」の足音

2022年3月号

「中央銀行による金利への行動がなければ、インフレはさらに深刻な問題になる可能性がある」
 タカ派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁は二月「制御不能となるリスク」について警鐘を鳴らした。同氏はフェデラルファンド(FF)金利を二%以上に引き上げる必要があるとする。一月の消費者物価、生産者物価、雇用統計のすべてが過熱し「利上げ」の必要性を訴えている。米国の足元の景気は強いが、インフレに勝つ力はあるか。家計面から見てみたい。
 二〇〇〇年には四十四兆ドルだった米国の家計純資産は〇八年の金融危機を乗り越えて増加を続け、二一年(六月末時点)は百四十一兆ドルに達した。前年比二割以上という増加率は「過去最大の成長」である。二十一世紀に入り家計の純資産は三倍以上も増加した。
 バランスシートも強い。パンデミック前から消費者は家計債務を少しずつ減らしてきた。家計債務はわずか十八兆ドルにすぎない。GDP比で〇八年のピーク九六・五%から二一年には七七・八%にまで減少した。家計債務の多くは住宅ローンと学生ローン。その可処分所得比は九%と低水準だ。
 この「バラ色の家・・・