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経済

「ガソリン補助金」に漂う腐臭

業界支援と「選挙対策」に消える税金

2022年3月号

 ガソリン価格の上昇、高値止まりに対応して、政府は石油元売り各社に一リットルあたり五円の補助金を支給、卸売価格の引き下げを求めた。ガソリンスタンドでの小売価格への波及効果を期待したものだが、ほとんど効果は出ていない。政府は補助金の増額、ガソリン税引き下げ条項の発動など追加策も検討しているが、そもそも現状のガソリン価格は車の燃費向上や物価を考慮すれば、過去と比較して決して負担は重くない。政府与党の目的は庶民の家計支援より、集票マシンであるスタンド業界への支援という面が強い。
 ガソリン価格が全国平均で百七十円を突破したことで、経済産業省は一月下旬から元売りに補助金支給を開始した。当初三・四円から三・七円、二月半ばには五円まで金額は拡大された。元売りは補助金を全額、ガソリンスタンドへの卸値引き下げに充てているが、ガソリンの店頭価格は上昇を止められない。
 経産省は二月中旬段階で、五円の補助金によって三・八円の押し下げ効果があったと分析しているが、首都圏でガソリンスタンド十数店を運営する石油小売業者のひとりは「ほとんど効果はない」と断言する。スタンド業界は長年、激しい値引・・・