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経済

塩野義「コロナ治療薬」の危うさ

政治的「特例承認」は無理筋

2022年3月号

 塩野義製薬が開発を進めている新型コロナウイルス治療薬の開発が大詰めを迎えている。二月七日、同社は十二歳から六十歳代までの無症状、軽症、および中等症の感染者六十九人を対象とした臨床試験で、開発中のS-217622が、「陽性患者の割合をプラセボ(偽薬)群と比較して約六〇〜八〇%減少」させたと発表した。
 マスコミは「塩野義承認申請へ  コロナ国産飲み薬期待大」(読売新聞、二月八日)、「塩野義のコロナ飲み薬、治験完了前に実用化も  首相検討」(日本経済新聞、二月七日)と好意的だ。塩野義の株価は、一月三十一日の六千四百二十七円から二月七日には、七千九百八十四円に急騰した。
 ただ、この歓迎ムードとは対照的に関係者の厳しい予想もある。ライバル企業の社員は「塩野義の新薬が大型商品へと発展する可能性は低い」と指摘する。この人物が不安視するのは「ファイザーとのガチンコ勝負に勝たねばならず、塩野義には荷が重いから」だ。

ファイザーに劣る有効性

 現在、国内外で承認されているコロナ経口治・・・