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社会・文化

熊本「半導体誘致」に中国の影

狙われるTSMCの「人材と情報」

2022年3月号

 新型コロナウイルス感染症の拡大や自然災害、米中の貿易摩擦などで世界的な半導体不足がいまも続いている。
 そんな中の二〇二一年十一月、半導体ファウンドリーの世界最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)が、ソニーグループと合弁会社を作って熊本県に新工場を建設すると発表した。経済産業省の肝煎りで、日本政府も設備投資額の半分ほどに当たる四千億円規模の補助金で支えることになる。
 さらに自動車部品メーカーのデンソーも工場に四百億円の投資をすると発表。デンソーはトヨタ自動車が筆頭株主であり、半導体不足が直撃している自動車大手も二四年の生産開始に期待を寄せていることがわかる。
 もっとも、このTSMCの熊本工場に注目しているのは国内企業ばかりではないようだ。経産省関係者は「実は、この誘致の様子を虎視眈々と窺っているのは中国も同じだ」と語る。
 ハイテク産業育成策「中国製造二〇二五」で半導体産業を重点産業に位置付けている中国は、半導体の国内自給率を、二五年をめどに七〇%まで引き上げる野心的な目標を掲げる。だが実際には二〇%ほどにとどまるのではないかと見込まれて・・・