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社会・文化

コロナ鎖国下の クラシック音楽界

救世主となった外国人指揮者たち

2022年3月号

 昨年十一月二十九日、岸田文雄総理は翌日からの全世界対象の外国人入国禁止を表明した。スピード感ある緊急避難的処置と高く評価する声もあり、一時は内閣支持率を引き上げる要因ともなる。この政策に最も大きな影響を受けた業界のひとつがクラシック音楽だ。日本在住の音楽家のレベルが上がっているとはいえ、まだまだ「本場外国人」に価値はある。そればかりか、昨今では中国や韓国などアジア出身のスター独奏者も多数出現している。良くも悪くもガイコクジンなしではやっていけない業界構造なのだ。
 ソリストは長老から若手までそれなりに国内の人材に厚みがあるものの、困るのは指揮者。日本オーケストラ連盟正会員だけでも二十五団体あるプロのオーケストラは、コロナ禍でも演奏会を開かねばならない。ポディウムに立つのが数人の日本のベテランや中堅、あとは日本人若手ばかりで、楽団の音楽監督や首席指揮者が登場しない状況がまる二年も続くのは芸術上も経営上もよろしい筈がない。
 昨年十月からは、NHK交響楽団桂冠名誉指揮者ブロムシュテット、東京交響楽団音楽監督ノット、東京フィル首席指揮者バッティストーニ、日本フィル桂冠指・・・