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連載

をんな千一夜 第60話

「女性性」を憎んだ“革命家”
石井 妙子

2022年4月号

《永田 洋子》

 ロシアによるウクライナ侵攻のニュース一色に染まる中、「あさま山荘事件」を振り返る新聞記事や、関連の新刊本をいくつか読んだ。今年はあの事件から五十年という節目にあたる。
 共産党や社会党を旧左翼として批判した若者たちが急進化し「新左翼」の名のもとに、次々と組織を作った。
 その中のひとつに赤軍派(共産主義者同盟赤軍派)があり、革命左派(京浜安保共闘革命左派)があった。そしてこの二つが共闘を誓って合体し、新組織「連合赤軍」が誕生するのである。
 彼らはアジトを都心から山岳地帯に移すと、山小屋で共同生活を送り「軍事訓練」に勤しんだ。盗んだ猟銃を使って実弾訓練をし、心身を鍛え、革命を起こせるような兵士になろうとしたのだ。
 一九七一年十一月から群馬県にある榛名山の山小屋に籠った彼ら彼女らは、皆、十代二十代の若者で総勢約三十名。赤軍派の森恒夫と革命左派の永田洋子がリーダーで、ふたりは互いを意識して張り合い、常に主導権を争った。
 閉鎖された極寒の空間。次第に自分で自分を批判・・・