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連載

日本の科学アラカルト 141

水素社会の実現の鍵握る 「磁気冷凍技術」の開発

2022年5月号

 冷却―。我々は生活の様々な局面で、モノを冷やしている。身近なところでは冷蔵庫や夏場のエアコンが思いつくだろう。古くは、水や氷、風などを使って冷却作業を行ってきた人類が、「冷やす機械」を手に入れたのは十九世紀初頭のことだった。現在使われている冷蔵庫やエアコンの多くは、約二百年前に開発されたものと基本的には同じ原理で動いている。
 気体を、コンプレッサーを使って圧縮すると高温になる。そこから熱を取り除いた後に、気体を一気に膨張させると周囲の温度よりも低くなる。この冷たい気体を「熱交換器」に通すことで、エアコンは室内の空気を冷やしている。冷蔵庫も同様で、「気体冷却」や「気体冷凍」と呼ばれる方式だ。
 この他に「ペルチェ素子」を使うこともできる。二種類の異なる金属を接触させた回路に電流を流すと、一方から熱を奪い、一方で熱を放出する。これもまた十九世紀に発見された原理だが、モーターなどを使わずに冷やせるため、ワインの貯蔵庫などで実用化されている。
「エネルギー輸送」の場面でも冷却することで効率が上がる。広く実用化されているものでは、液化天然ガス(LNG)がある。隣・・・