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プーチンを悩ます「人口危機」

ウクライナ侵攻の隠れた理由

2022年6月号

 ウクライナ侵攻の裏でロシアの人口減少が加速している。二〇二一年はソ連崩壊後最大となる百万人が失われた。ロシアの人口学者が描く最悪のシナリオでは、現在一億四千五百万人の人口は二〇三五年までに一千二百万人減る可能性がある。大統領ウラジーミル・プーチンがウクライナ支配に躍起になる背景には人口危機への焦りが透ける。
 ロシア人とウクライナ人は歴史や宗教で結ばれた「一つの民」とプーチンが主張し、今回の侵攻を計画していた証しとして注目された二〇二一年七月発表の論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的な一体性について」の中にこんな記述がある。
「残酷で人工的な、ロシアとウクライナの分断の結果、全てのロシア人の人口は数十万人、数百万人単位で減るかもしれない」
 ロシアの弱体化を狙う欧米がロシアとウクライナを分断しようとしてきたとの歴史観を展開したこの論文は、プーチンが人口問題を意識していたことを示している。
 ロシアは今回の侵攻前からウクライナ人を自国の人口に取り込んできた。ロシア当局が四月に発表した人口は一億四千七百万人だが、これにはロシアが二〇一四年に一方的に・・・