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WORLD

中東に訪れた一時の「平和」

「米露の空白」で域内外交が急進展

2022年6月号

 中東が、第二次世界大戦後ではまれな緊張緩和(デタント)の時代を迎えた。
 最大の対立軸だったアラブ諸国とイスラエルの対立が解消したことに加えて、このところ台風の目だったトルコのレジェップ・エルドアン大統領は、深刻な経済危機に見舞われ、仇敵扱いしてきたサウジアラビアとの和解に転じた。
 デタントを象徴する舞台となったのは、五月中旬のアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビだ。
 五月十三日に死去したハリファ大統領の弔問に、真っ先にフランスのエマニュエル・マクロン大統領が十五日に駆け付けた。ボリス・ジョンソン英首相やサウジのムハンマド皇太子らも続いた。
 カマラ・ハリス副大統領も、アントニー・ブリンケン国務長官やロイド・オースティン国防長官ら豪華な米代表団を引き連れて、十六日にUAE入りした。
 イランからもホセイン・アミール・アブドラヒアン外相が同時期に弔問に訪れ、「イラン核協議をめぐる米側との接触はあるか」との臆測を生んだ。どこからも接触を裏付ける発表はなかったが、イランは昨年十一月にも外務次官をUAEに送ったばかり。関係改善に熱心な・・・