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社会・文化

それでもマスクを外せない日本

非科学的習慣はいつまで続くか

2022年6月号

 新型コロナウイルスを根絶できない以上、我々はコロナと折り合いをつけて生きていかねばならない。五月十一日、松野博一官房長官は、屋外でのマスク着用を推奨しない方針を示した。山際大志郎経済再生担当相も「科学的な知見に基づきながらやらねばならない」と発言しており、ようやく日本でもマスク着用の緩和が始まった。しかし、そもそもマスク着用は政府の指示に従う「お上頼み」でよかったのか。
 マスク着用の有用性を示す根拠とされるのは、昨年十二月にエール大学の研究チームが米『サイエンス』誌に発表したものだ。三十四万二千百八十三人が参加した臨床試験で、マスク装着群で、発熱や倦怠感などコロナ感染の症状を呈した人は一一・六%、血液検査のコロナ抗体陽性者は九・五%低下したと報告した。確かにマスクを着用することで、コロナ感染は予防できそうだが、予防効果はわずかに一割程度だ。
 さらに、この臨床試験の結果の解釈には注意を要する。それは、この臨床試験が、バングラデシュの約六百の村で実施されているからだ。最近の研究で、コロナ感染の大部分はエアロゾルを介した空気感染によるものであることが明らかとなってい・・・