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「安倍喪失」台湾の戦慄

ご破算となる「対中防衛戦略」

2022年8月号

 安倍晋三元首相の死が台湾に大きな不安をもたらしている。葬儀に来日した台湾の頼清徳副総統について、林芳正外相が記者会見で名前を口にせず「ご指摘の人物」としたことに、台湾社会は大きなショックを受けた。「安倍氏のいない日本は台湾に冷たい」と台湾人記者。「アジアの孤児」として中国の侵攻への恐れが募る。経済部(経済産業省)高官は「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への加盟は無理になったかも」と肩を落とす。
 台北市中心部の日本大使館にあたる日本台湾交流協会事務所に七月十一~十七日、設けられた弔問記帳の特設会場を訪れた人は計一万二千人を超えた。三十五度を超える炎天下で花束を抱える家族連れの長蛇の列を見た台湾の外交関係者は、「安倍氏死去が台湾人に与えたショックは国民党一党独裁時代の総統、蔣経国死去の時より大きいかもしれない」と話した。
 台湾人が安倍氏に親しみを感じるのは、困ったときに必ず台湾を支援する姿勢を示してきたからだ。
 昨年春、中国政府が突然、台湾産パイナップルについて「害虫を検出した」ことを理由に輸入禁止措置を発表した。独立志向の蔡英文政権への嫌がらせ・・・