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WORLD

世界食料危機はこれからが「本番」

先進国のエゴが生む「飢餓地獄」

2022年9月号

 ロシアのウクライナ侵攻が引き起こした穀物価格の暴騰などの食料危機は、黒海からの輸出再開で落ち着きをみせ始めた。ただ、輸出の主体は家畜飼料のトウモロコシなどで、四年連続の干ばつに見舞われた東アフリカに必要な小麦の輸出は増えていない。一方、食料需給に不安のなかったアジアではインド、中国の穀倉地帯を記録的高温と渇水が襲い、コメ不足の懸念が高まっている。世界の食料事情はウクライナ情勢以上に地球温暖化と食の構造変化に揺さぶられている。「本当の危機はこれから始まる」(農業アナリスト)と認識すべきなのだ。
 七月末、国連とトルコの仲介で、ウクライナ・オデーサ港から農産物を積んだ貨物船が次々と出航するようになり、世界は胸をなで下ろした。ウクライナの穀物市場への復帰で、小麦、トウモロコシ、植物油の需給ひっ迫は解消に向かうとみえたからだ。だが、八月末までに輸出された農産物の内容は意外なものだった。積荷の八〇%超はトウモロコシで、畜産飼料となる「ひまわり種子の搾油粕」が続き、小麦は全体の七%前後にすぎなかったからだ。
 ウクライナの小麦収穫期は九月以降のため一見、不思議ではないが、オデ・・・