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連載

をんな千一夜 第67話

高場乱 玄洋社を生んだ「男」
石井 妙子

2022年10月号

 平成に入ってからというもの何をもって保守というのか、よくわからなくなった。この度の国葬をめぐる世論の混乱も、こうした問題と無関係ではないのだろう。右翼、左翼と簡単に口にして、議論を深めることなく済ませてきた、そのツケがこのような形で回ってきたのだと思えなくもない。
 天皇を信奉し保守的で国粋主義的な立場を取るものを右翼、共和制や社会主義にシンパシーを感じる人物や団体を左翼と定義するのか。アメリカに追随し、中国や韓国を蔑視、敵視することが「右派」「保守」「愛国」なのか。
「右翼の親玉」「右翼団体玄洋社の主導者」といわれた頭山満ならば、今のこの日本の状況を果たしてどう見るのかと、ふと考えた。日本近代史の表舞台には出て来ないものの、いくつもの重大事件に絡み、政財界の要人に影響を与えた玄洋社の頭山満。彼の思想の核にあったものは、西洋列強の覇権主義に対する強烈な反感であった。アジアを蹂躙して搾取を尽くす欧米諸国の在り様を憎み、東洋的な価値観を共有するアジア諸国で連帯して欧米に対抗する、それが彼の求めた理想であった。
 玄洋社は、「血塗られた秘密結社」などではなく、・・・

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