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連載

新大学評判記 第39話

国立音楽大学 音楽データサイエンス・コース AI時代「新領域」を切り拓けるか

2023年3月号

 国立音楽大学が今年四月に音楽データサイエンス・コースを開設する。データサイエンスは都内の私立大だけで十数校、全国では国公立も含めれば五十以上の学部、学科、コースがこの数年で開設され、過剰供給で定員割れ必至という学校が多い。そんな中、国立音大は「音楽の感性的な部分をデータ解析し、音楽の本質に迫る人材の育成」という明快な目的を掲げる。一九七〇年代の電子音楽の誕生から楽器のデジタル化、歌唱の人工合成「ボーカロイド」など音楽のデータ処理の進化が加速するなかで、国立音大の音楽データサイエンス・コースは「学問としての音楽」にも刺激を与えそうだ。

唯一欠けていた視点

 一月、「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」のメンバーだった高橋幸宏の訃報が伝えられると、日本人の多くは高橋の代表作で八〇年にリリースされた「ライディーン」をニュースや特集番組で耳にし、日本がテクノポップ、電子音楽で世界をリードしてきた記憶を呼び覚ました。もちろんYMOのサウンドは電子アナログ音源だが、そこから世界の音楽の電子化、デジタル化の潮流が・・・

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